エコリフォームのすすめ

全国商工新聞連載 2013年8月〜2014年1月  

  5 省エネは計算できる

 Q値とは熱損失係数といい、建物全体で出て行く熱量を算定し床面積で割った値です。この値が小さいほど計算上断熱の良い省エネな建物となります。Q値の大きさが冷暖房費を示していると言っても良いでしょう。
 あなたの家が普通に作った家でQ値4.0、お隣は省エネにこだわった家でQ値1.0とします。あなたの家が暖房費に月2万円掛かったとすると、お隣は同じように暖房して5,000円で済むことになります。
 4倍とは極端な比較、と思われるでしょうが、現在でも普通に建てればQ値は3〜4くらい。少し前ならサッシがシングルガラスなので4を切ることはありません。また無断熱の家は7くらいです。いくらで冷暖房しても熱が逃げ放題です。現在私が設計している家はQ値1.2〜1.5程度なので、「4倍」は現実的な数値です。

熱抵抗のイメージ
 
 熱は建物の表面(屋根、外壁、床または基礎、窓など開口部)からと換気によって逃げていきます。逃げていく熱量(1時間、温度差あたり)を計算してQ値を出します。
 建物の表面からの熱損失を小さくすると省エネになっていきます。表面から出ていく熱の1uあたりを熱貫流率(U値)と言います。U値を小さくすれば熱が逃げにくくなり、熱損失量が減りQ値が下がり、省エネになっていきます。建物表面のU値を低くすることが省エネ住宅のイロハの「イ」です。
 
 U値は熱抵抗値(R値)の逆数です。R値は材料の熱伝導率×厚さを合計し、空気との熱伝導抵抗を加えたものです。熱伝導率の低いものを厚めに使えばR値は上がり、U値は下がります。
 コンクリートはいくら厚くても断熱性能はありません。石膏ボードは断熱性能はありますが、厚さが薄いのでたいした熱抵抗にはなりません。やはり断熱材は必要です。
 
 コンクリート12cmにモルタル2cm塗った壁は、R値を計算すると0.238です。U値はR値の逆数なので、U値は4.20W/(u・K)になります。
 この壁に3cm厚の発泡スチレンボード(熱伝導率0.040)を貼るとR値が0.75上がり0.988、U値は1.01となり、これで壁からの熱損失は1/4になりました。わずか3cmの断熱層でこれだけ改善します。もちろん結露予防にも効果があります。
 
 省エネルギーは計算できることがわかっていただけましたでしょうか。興味の出た方は是非参考書を手に入れて勉強してみてください。
 (参考文献:住宅の省エネルギー基準の解説/(財)建築環境・省エネルギー機構)