エコリフォームのすすめ

全国商工新聞連載 2013年8月〜2014年1月  

  7 断熱計算の落とし穴

 2回連続で省エネ計算を推奨しておきながら、それを否定するような話しか、とお思いでしょうが、計算ばかりに頼っていると計算外に、予定の断熱性能が出ないことが起きます。そうならないためのお話しをします。
 断熱性能を上げQ値を下げるのは断熱材です。その断熱材の種類と使い方によって期待通りの結果になりません。私が疑うのは断熱材の熱伝導率の数値です。断熱材の区分でCランク(熱伝導率0.040〜0.035)を見るとグラスウールもあればポリスチレンボードもセルロースファイバーもあります。
 厚さが同じなら本当にグラスウールとポリスチレンボードと同じでしょうか。
 
 断熱材はすき間無く施工することが肝心です。特にマット状のものは空隙が出来やすく、そのすき間で空気の対流が起き断熱効果が落ちます。このような断熱材は周囲を密閉してすき間無く充填する必要があります。
 ところがグラスウールの指定工法は袋の両端を柱に止めるだけです。この時点で柱の縁はビニールの袋だけで、グラスウールとは離れている部分があります。またその上から胴縁を打てば胴縁分が空間になるし、グラスウールの背面にも空間ができています。これでは断熱材を入れたことにはなりません。
 外側は構造用合板などの面材を柱に打ち付け、内面は石膏ボードなどを柱に直接張る中に壁より厚いグラスウールを押し込んではじめて断熱層が出来たと言えるでしょう。天井の上、床下もすき間を作ってはいけません。
 
 また、グラスウールはガラス繊維なので光を通します。赤外線も光です。片側の壁が熱されて温度が上がると、赤外線が出ます。輻射(ふくしゃ)熱です。これをグラスウールは反対側に通してしまいます。これを防ぐにはアルミホイルなど反射する材料を張ることでできますが、現実的ではありません。
 以前、北海道から高密度で20cm厚のグラスウールを取り寄せ、屋根の断熱に使用しましたが、屋根の熱を止められませんでした。
 ドイツではQ値計算専門の事務所があって、期待通りの断熱性能が出ないと訴訟問題になるため、断熱材の種類によって厚さの低減をして計算するそうで、グラスウールだと厚さに0.5くらい掛けるという話しを聞きました。
 断熱材にはその材料の性質や密度、形状に特徴があり、さまざまです。その材料にあった使い方をすれば、その効果が出ますが、間違えると施工しにくかったり、効果が十分に表れなかったりします。
 断熱材の選択はすき間無く施工できるもの、光を通さないものが期待通りの結果になりやすいでしょう。また、木材から作られた断熱材もあり、自然素材の特長を生かした使い方が出来ます。これは次回お話しします。