NA.home通信 469号
28.Jul.2019

 「この家は台風のとき建てたの」。
 「昭和34年ですか、丁度60年前ですね」。
 先日、耐震診断に行った先での会話。壁にヒビが入っていて、そのラインが浸水の跡だそうな。塗り直しても出てくるんだね。被災者のキズも消えないからこんな会話が成立する。
 5歳で被災。地元の同年からはこの時期になると必ず出てくる話。
一級下になると全く話題にならないそうだ。5歳が記憶の限界なのか、また話をしているので忘れないのかも。
 
 「屋根を軽くして台風は大丈夫ですか?」と聞かれる。屋根が重いのは台風で飛ばないようにするためと思っている人、この地方に多い。
 台風の多い高知や宮崎は砂地で、粘土が無い。そのため、土壁の家が少なく、瓦の下の葺き土も無い。瓦の産地だからこそで、台風との関係は無さそうだ。
 
 日本各地で台風に対する考え方が大きく違う。
 去年関空で大勢の人が取り残された事件があった。台風直撃のコースなのに何で関空は営業していたのだ。同じ時刻、中部空港は閉鎖していたぞ。関西人、台風ナメすぎ。
 
 一昨年、松山での耐震リフォーム達人塾。その日、松山を台風が直撃する予報。愛媛県からの連絡は無い。どうするんだろう。とりあえず、前日に空路で松山入りした。
 ところが、台風は高知に上陸すると直角に曲がり東に逸れ、当日は奇跡的に青空。会場に行くと何も無かったように準備がされている。愛知県なら絶対中止しているぞ。松山には台風が来ないと思っているらしい。
 「宇和島方面は交通が止まっていますので来られない方もいます」。との説明。
 宇和島どころか、四国全体、陸路、海路、空路全て止まっている。
 帰れないので予定を翌日にズラし、懇親会に参加。そこには災害に無縁な松山の街の賑わいがあった。(436号参照)

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