NA.home通信 423号
30.Oct.2016

 月見かザルの二択ってどうなの?、姫路駅構内の店のメニュー。生卵が苦手なので月見はあり得ず、ざるそばにした。
 
 苦手な月見うどんを食べたのはただ一度、修業時代の慰安旅行、京都でのこと。
 せっかちな所長は速くできるメニューを聞いて「月見うどん三つ」注文した。逆らえない。生卵を落とすだけ時間がかかるじゃ無いか。中途半端に冷めて、どろっとした後味の悪いうどんを無理矢理食べた。
 
 子どもの頃、近所のうどん屋で「うどんきし」なるものを頼んだ。
 出てきたものはどう見てもうどんで、なにが「きし」なのか解らなかった。それが最近になって、うどんにきしめんの出汁と具を乗せたものだと知った。50年ぶりに疑問が解決した。
 きしめんには必ずほうれん草と蒲鉾と花鰹が載っている。姫路の店のおばちゃんが「卵無いと乗せるものがないんやわ」と言っていた。関西には蒲鉾や花鰹をうどんやそばに載せる習慣がなく、月見で食べるのが一般的なのか。
 
 東京の立ち食いそばは何かムカつく。そばに汁を掛けただけで出てくる。ネギや天かす、おかかは自分で載せる。蒲鉾も油揚げもほうれん草もない。さらにおかかが鰹ではないヤツ。人の食い物じゃないな、これは。
 
 東海4県のメンツでうどんそばの議論をしたことがある。近県なのにかなり違っていて話が盛り上がる。そんな議論に水を差したのは伊勢のメンバー。
 「出汁に沈んでいたら、うどんちゃうやん」、ハイハイ。
 金山できしめんの店を見つけた。たまり出汁で、ほうれん草と蒲鉾、花麩が入って、花鰹が載っている。これだな。時々食べたくなって、脚を伸ばす。店のメニューには月見も天ぷらも無い。でも味噌カツはある。これぞ名古屋の味である。

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