NA.home通信 406号
1.Nov.2015

 埋もれたニーズを掘り起こす。それがニュービジネスである。
 神戸で行われた商工業交流会の分科会、ニュービジネスがテーマ。パーティーブライダルを起業した人、介護タクシー会社の経営者など報告される中、ハカマを縫って25年というおっちゃんが演壇に立った。ハカマ?。
 
 京都の親会社から「ハカマ縫えるか」と聞かれ、プロの仕立屋のおっちゃんは二つ返事で請けた。するとそれがそこそこ当たって現在に至るという。四半世紀経って時代が変化しても需要は落ちないのだそうだ。ハカマが。
 巫女さんのハカマが朱色、見習いは白、次にあさぎ色、宮司は紫のものを履いている。その4種類をサイズを変えて既製品にしている。神職の学校の制服のハカマも扱っている。そういえば全国何処へ行っても、同じようなハカマを見る。このおっちゃんが縫っていたのか。
 商売敵が居ないらしく、独占である。パイが小さいから、ほかは参入してこないし、中国やベトナムでは縫わないだろう。神職にとってハカマは仕事着、消耗も激しい。面白いところに目を付けた。
 
 先日、地鎮祭があった。宮司は若い神主を連れてきた。宮司は紫、若はあさぎ色のハカマだ。あのおっちゃんが縫ったヤツか。もう神職のハカマを見るとおっちゃんの顔が消えない。ハロウィンで巫女さんのコスプレ見てもおっちゃんの顔が。
 
 おっちゃんはもうじき70才、後継者が居ない。既製のハカマが無くなる危機だ。既製品化することで伝統を守ってきた、と言っても良いだろう。
 無いと困るので、親会社が何とかするだろうが、外国製になるのだけは止めていただきたい。

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