NA.home通信 403号
30.Aug.2015

 社会保険や厚生年金は給料から天引きして、同額を使用者が負担して納める。会社は福利厚生費として経費になるが、中小業者には重い負担である。雇用者の義務と言えばそれまでだが。
 最近、社会保険を持たない外注労働者を入れさせない元請けや企業が出てきた。
 「不当だ、親会社の横暴だ」と言っている下請け業者が居るが、本末転倒で、福利厚生費が払えない外注工賃が問題なのである。

 私が19才の春、25才の新人N森さんが入所してきた。訳あって前の会社を辞め、設計事務所で修行を始めた。
 妻子持ちでこんな安月給の世界、大丈夫だろうか。彼は家族を守るため、社会保険の加入を要求した。勤労学生の身では頭にないことだ。
 所長夫婦はいろいろ調査し、社会保険の加入を決めた。給料は引かれるが、手元に自分だけの保険証が届いた。一人前の社会人になった気がした。今思えば立派な決断である。
 
 ご主人の扶養の範囲内で働きたいというパートさんが多い。給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円を合わせて103万円まで所得税はかからない。それを超えると社会保険庁が許してくれない。しかし、社会保険は許すが、厚生年金まで配偶者も払ったことになるのは、自営業者として納得できない。
 
 高校の非常勤講師を9年やった。
 給与所得だから65万円まで無税なのだ。冷遇されている個人事業主に税金のかからないお金が入ってくる。しびれるほど嬉しかった。
 今は耐震診断で副収入があるが、これは何の控除もなく営業所得と合算になる。つまらん、実につまらん。
 
 61才の誕生日が来て厚生年金受給資格ができた。安月給だったけど、N森さんと所長夫婦のおかげで、少ないが基礎年金に上積みされる。
 年金は70万円まで控除がある。久々に税金のかからないお金が入る。労働無しで。あのしびれるほどの嬉しさがまた味わえる。
 あー血圧が上がりそうだー!。

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