NA.home通信 401号
19.Jul.2015

 畳の無い家ばかり設計しているが自身は畳派である。茶の間(リビングとは言わない)も寝室も畳だ。
 畳は日本間の象徴であるが、畳があって日本間ができたのではなく、文化の発展と共に出来上がってきた。
 庶民は土間にワラを敷いて寝ていたが、武家は板の上に寝る。せめて主人だけでもと畳を二枚ほど入れた。それが床の間の起こり、床の間の床は寝床を指す。
 部屋全体に畳が敷かれると、主人は床の間に頭を向けて寝るようになる。
 
 床の間の下がり壁、鴨居のような部分は「落シ掛(オトシガケ)」と言い、外れるようになっていて、丸腰で寝ていて襲われたときこれを武器にする。だから柔らかい杉や桧を使わず、堅木で刀に負けない樹種でつくる。このように畳の歴史は闘う男の歴史でもある。
 
 耐震診断などでいろんなお宅へ伺うと畳が粗末な扱いを受けていて悲しい。上敷きがかぶせてあるところは最悪である。
 昔は春秋に町内一斉大掃除があって、畳を上げて道路に干した。車の少ない時代でもある。DDTを畳の下に撒いて新聞紙を広げ、畳を戻す。夕方になるとパンパンと畳を叩く音が町内に響き渡る。いつのまにか大掃除が年末のものとなり、畳の上には家具や電化製品が乗っかり、動かせなくなった。
 
 わが家は座机しか載っていない。この春、畳の表替えをした。5年ほど前新調したので、今回は裏返しで済む。4代目の畳表、前3代は安物だったので裏返す前に穴が開いた。今のは上等で1枚1万円くらいだったかな。やっぱり保ちが違う。
 
 畳に座って食事もするし、パソコンも叩く。本や新聞を読む。と言えば格好いいが、ホントは酒を飲んで寝っ転がり、テレビを見ながらうたた寝。これが至上の幸せなのだ。
 ナニ?ソファーで十分だと?貴様それでも日本人か。

HOME   LIST    400号   402号