NA.home通信 346号
29.apl.2012

 長野県大町市にミニ水力発電の見学に行ってきた。
 大町市は松本から梓川に沿って北に上がった位置にあり、西側が北アルプスである。水が豊富で、農業用水から生活用水、さまざまな水路が無数に走っている。昨年行った蔦温泉も大町市。近くに東京電力のダムがあったが、中部電力のエリアらしい。
 
 見せていただいた発電所は2ヶ所。最初見たのは簡易組み立て式のもので、主に教育用に使っている。もともとある水路の段差を利用して、水が1.5m落ちるところに樋をかけ、メガホン状の落ち口に船のスクリューのようなプロペラを下向きに回し、発電機に直結させ電気を起こす。ベトナム製の発電機で運賃のほうが高いくらいのものらしい。問題は落ち口を絞っているのでゴミがつまりやすく、目が離せないのだそうだ。だから日常に使っていない。

 もう一つは川上さんの発電所。これは秀逸である。自宅前の用水から水を引いて45cmほどの落差を作り、その傾斜を流れる水で螺旋状のスクリューを回し発電。その電気をバッテリーで溜め、100Vの交流電気に変え、家の電力として使っている。スクリューは川上さんが設計し、名古屋の鉄工所で製作。変電設備は全部自作である。もう10年動いている。
 ベトナム式のものと違い、ゴミはほとんど問題なくそのまま流れて元の水路に戻っていく。自宅の前なので目が届き管理も簡単だ。だから24時間発電を続ける。300w/h程度だが休み無く発電し続けるので、太陽光の3kw/hに匹敵する。

 ミニ水力発電の最大の問題は流れるゴミではなく「前例がない」という役所の壁と、電力会社のイジメ。親方日の丸体質を正面から突破してきた彼らの取り組みには頭が下がる。電力の自由化にはまだ時間がかかるだろうが、その突破口の一つになるに違いないだろう。
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