NA.home通信 345号
8.apl.2012

 四国へ旅行し高知市と松山市へ行った。
 両市に共通するのが路面電車である。路面電車は良いね、バスは経路を知らずに乗ると、方向違いのところに連れて行かれることもあるが、路面電車ならそれは無いし、地図に載っているのでどこで降りればいいかわかりやすい。また、電車の中から街並みがよく見え、どこに何があるか見てわかるのがありがたい。
 
 その点地下鉄は全く景色が見えないので、知らない町、とくに外国では恐怖に似たスリルがある。それもまた良いのかもしれない。
 浅田次郎に「地下鉄(メトロ)に乗って」という小説がある。地下鉄の階段が過去への出入り口になっている話だが、夜の暗い階段を下りていくとそういう気持ちになる。ところが「路面電車に乗って」となったらどうだろう。細野晴臣か、かまやつひろし辺りが歌を書きそうな明るいイメージである。
 
 松山城を降りて、大街道という松山の中心街にある電停に行くと、前の車両につかえたように坊ちゃん列車が停まっていた。
 前の電車は行き先が違っていて、坊ちゃん列車が道後温泉行きだったので乗せてもらった。一日乗車券だと100円の追加料金で1回だけ乗れる。
 狭い車両は木製で、機関車は「ポー」と汽笛を鳴らし、水蒸気の煙を吐いて走る。明治時代の機関車を改造してディーゼルで走らせ、客車はそのままだ。いわば文化財をリニューアルして路面電車として活用している。実に面白い。
 
 昨年夏に豊橋で「ビール電車」なるものに乗った。
 中も外も飾り付けがされていて、日常はバスの乗務員のお姉さんがビールを注いでくれる。話し上手で客の扱いが上手く、飽きない。たいへん楽しい時間を過ごすことが出来た。
 愛知県では路面電車は豊橋だけになってしまった。動く文化財として大事にしていきたいものである。
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