NA.home通信 343号
26.feb.2012

 耐震診断で、凄い家を見させていただいたことがある。
 建ったのはおそらく江戸時代後期、柱が槍ガンナで削ってあった。二階は天井が低く、内装は建てた年代より新しい。
 「二階はあとで内装しましたね」と尋ねると
 「おばあさんが嫁に来たときのままです」
 そんな最近の話しではなく、おそらく明治時代だろう。
 「明治時代にたいへん繁盛したようですね、二階を来客用に慌てて内装したように見えますよ」
 なんでそんなことが解る?的なご主人の顔だった。それから興味深い話しをしていただいたが、個人情報なので伏せる。
 
 建築の歴史は工法、道具の使い方などでだいたい解る。
 大河ドラマ「平清盛」は平安時代だ。当時の建物は寝殿造。十円玉に描かれた鳳凰堂がその代表である。驚くことに建具がない。寒くないだろうか。
 
 当時はノコギリが無く、板を作るのが難しかった。一説には丸太を半分に割り、丸い部分をはつり落として板にしたという。これだと丸太1本で2枚しかできない。床板などの厚い板はたぶんこれだろう。
 もう一つの方法は剥いでいく方法。くさびを入れて厚さが一定になるように剥いでいく。この方法では薄くて小さな板しかできないように思うが、ある程度の厚みと幅が可能になったのだろう。そうでなければ板戸ができない。
 
 寝殿造は貴族や武家の家で、庶民の家は、板や角材は無いのだから、丸太や草木、土で作る以外ない。竪穴式住居とあまり変わらない。ノコギリが一般的になって板が簡単に作れるようになる江戸時代までこれが続くが、時代劇ではこのへんが甘い。
 そういう目で時代劇を見ると、楽しみが増える反面、ドラマに集中できない。
 おいおいその時代にそれはないだろう、と突っ込んでしまう。妻が滅茶苦茶いやな顔をするから口にしないようにはしている。

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