NA.home通信 339号
30.nov.2011

 先日天国(地獄かな)に行かれた談志師匠の言葉である。
 ウソには2種類あって、一つは統計のウソで、もう一つは真っ赤なウソだ。
 後者は全く根拠のないウソ。前者は情報を操作したウソと理解している。
 100人中、貯金0が99人、10億円ある人が一人居たとすると、その平均貯蓄高は一千万円である。算数的には正しいが社会的に許されないやり方だ。
 八ッ場ダムのパブコメでは印刷されたものが回っていて、そこに署名する形で知らずしらずに賛成意見にカウントされ、「圧倒的な賛成意見」になっていた。これを統計のウソと言わずして何という。
 
 体制側の情報操作は巧妙でたちが悪い。アンケートを役所の来庁者だけで行い、「そのような要求は少数派でした」と答弁する。スーパーやコンビニの前、パチンコ屋の玄関先なんかでやったら絶対違う結果が出たはずである。
 データを改ざんすれば犯罪だが、取り方で数字は操作できることを知っている。
 
 魚屋の亭主が間違えて朝早く行った魚河岸で大金を拾ってきた。それで酒肴を買い込み、仕事にいかず仲間と宴会をやる。
 心配した妻は大家と相談し、拾ったお金を届け出て、翌朝酔いから覚めた亭主に、お金を拾ったのは夢で、ドンチャン騒ぎは本当だとウソを言う。それを信じた亭主は心を入れ替え酒を断ち、まじめに働き大きな店を持つまでになる。
 拾ったお金が綺麗になって帰って来た。妻はこの事を打ち明け詫びるが、亭主は怒ることはなく、妻に礼を言う。

 ご存知、談志師匠の十八番「芝浜」、夫婦愛を描いた名作である。騙し続けた妻の苦しみが届き、聴く者を感動させる。
 真っ赤なウソには苦しみが伴い、統計のウソには作為が伴う、とまとめるのは乱暴だが、被害を与えるようなウソはどんな場合でも許されない。あくまでも「かわいいウソ」までにしてもらいたい。

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