NA.home通信 329号
1.may.2011

 旅は3度楽しめる。計画で楽しみ、行って楽しみ、旅の記録で楽しむ。中でも旅の計画を立てるのが大好きである。
 旅のはじめは時刻表を買うことだったが、最近はインターネットで全部計画から予約まででき、たいへん便利になった。その一方、不便になったこともある。地方の交通の便である。ローカル線の廃線、バス本数の減少で行けないところもある。
 
 先月、妻と鳥取県を旅してきた。ここは公共交通で行ける限界に近いと感じた。
 予め列車やバスの時刻を調べて、宿を出る時刻、昼食をどこで何時取るかなど、緻密に組んでいったのでそんなにストレス無く動けたが、一つ間違うと列車がなかったり、目的地に行けなくなる事態に陥る。
 今回は米子から京都まで山陰線を頑固に上ってきたが、列車の本数が少なく、ほとんど選択肢がなかった。
 
 それが東北となるとさらに組めなくなる。
 例えば山形から角館に行こうとすると、仙台に出て新幹線で盛岡に行き、秋田新幹線に乗り換えという検索結果になる。地図で見る限り鉄道はある。最短距離に鉄道がありながら、列車が無く行けないのだ。
 
 新幹線が震災から復興し青森から鹿児島まで通ったが、その一方で網の目から魚の骨のような交通形態に変わり、末端の交通は切り捨てられていくのだ。本当にこれで良いのか、新幹線は地域経済の活性化になっているのか、たいへん疑わしい。
 
 旅行者は不便も楽しんでしまえばそれで良いのだが、暮らしている人は、世の中が進歩しているのに、生活は後退していく、そういう思いではないだろうか。
 旅を計画する中で深く考えさせられることである。

HOME   LIST     328号    330号