NA.home通信 323号
12.dec.2010

 BS2の番組を見ていて寝てしまった。
 夜中、目が覚めると何か演劇をやっている。フィリピンでの捕虜の話らしい。新聞で確認すると「渡辺はま子物語」。
 若い人は知らないだろうが、私はギリギリ知っている。戦前、戦後を代表する歌手の一人で、戦中は精力的な慰問活動をした。
 戦後の代表曲「あゝモンテンルパの夜は更けて」は、戦犯で死刑囚として投獄されている元日本兵二人で作詞、作曲をした曲。渡辺はま子は日本で楽譜を受け取ると、レコーディングし、発売前にまだ国交の無いフィリピンに入り刑務所を慰問。これをきっかけに108名全員が恩赦になり日本に帰るという軌跡の物語である。
 
 途中からというかほとんど終盤のクライマックスから見たのだが、眠気が吹っ飛び見入ってしまった。
 主演は斉藤由貴、アイドル時代からは上手くなっているだろうが、はま子は声楽出身の本物だったのでどうかな、と思ったが大丈夫であった。
 一つの歌が国境を越え、人の心を動かし、大勢の命を救う。そういうことがあるから音楽は面白い。
 
 渡辺はま子の戦前の代表曲「蘇州夜曲」は作曲家服部良一の作品。
 服部はその時代に活躍しながら一曲も軍歌や戦意高揚の曲を作っていない。本人は「僕には圧力が無かった」と言っていたが本当だろうか。明らかに彼の作る音楽は敵国の香りがする。たぶん、戦争が終わるまで貯めていたんだろう。その証拠に戦後のはじけ方がすごい。「東京ブギウギ」「買い物ブギ」「東京カンカン娘」なんという派手な曲たち。戦前に「別れのブルース」などを書いてた人とは思えない。
 
 流行歌好きの私としては、歌番組の増えるこの季節がうれしい。今年の紅白はどうだろうか。でも、息子が帰ってくると「ガキの使い」を見たがるんだよね。中古テレビでも拾ってきて息子の部屋に付けておこうか。

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