NA.home通信 321号
31.oct.2010

 家を建てるには、工務店を決め発注するのが一般的だが、「常用」という方法がある。その昔はほとんどこれであった。材木など材料は施主が調達し、大工左官など職人を雇って日当を支払う。
 
 住宅瑕疵担保履行法では「常用」の扱いはどうなるのか。津島での勉強会で質問が来た。
 今時「常用」って、と驚いたがどうやら尾張西北部、三河南部にはまだ少なくないようだ、半田では絶えて久しい。
 これに明確な答えが出来なかったので、国交省中部整備局に行った折、この質問をしてみた。すると意外な答えが返ってきた。
 「常用って何ですか?」
 国交省の役人が常用を知らないとは何事だ。思わず説教になる。
 その後、国交省本庁で懇談の席があり、またこの質問をしたところ、説教が効いたらしく話しが通っていて
 「請負契約に当たらないので対象外」という答えを得た。
 東北や九州にもまだ常用の習慣はあり、この回答は歓迎された。
 
 借金で家を建てるのでは「常用」はあり得ない。まず見積書がない。請負契約がない。これでは銀行は貸してくれない。こういう習慣が残っている地域は豊かであるに違いない。
 わがまち半田は商人の町である。古い家のほとんどが借家普請である。それらに良い家は無い。
 そういうところで暮らしてきた庶民には「家を建てるというDNA」が存在しないのだ。そのためあっという間にハウスメーカーに駆逐され「常用」は無くなってしまった。
   中部整備局の担当者も悲しいかな都会生まれで常用で建てるというDNAが無かったのだろう。
 でもそういう視野の狭い役人が国の制度を作っているのも事実である。こんなことで良いのだろうか、日本の住宅政策は。

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