NA.home通信 320号
13.oct.2010

 パリのルーブル美術館は行ったことが無くても知らない人はいないだろう。展示を全部見るのには1週間ぐらいは最低かかるのだそうだ。
 この建物、もともとは宮殿、つまり人の住む家だった。ヴェルサイユやエリーゼ宮などと同じ用途である。とは言っても昔の宮殿は政(まつりごと)もやっていたので、日本で言えば「御殿」に当たる。
 ベニスのサンマルコ広場を囲む建物、教会を除けばほかは宮殿、つまり住宅である。それにしても贅沢な家たちである。
 
 洋の東西を問わず、昔の権力者、金持ちには多くの使用人が居て、それらを住まわせたり、政治の場にもなったりするので大きな家が必要だったし、権力を誇示する役目も建物が担っていた。庶民でも冠婚葬祭などは家でやっていたので、家柄相応の規模や見栄は必要だった。
 
 ところが最近は冠婚葬祭は家でやらず、法事まで寺や貸ホールを使うし、日本ではホームパーティーをする習慣もなく、家に大勢集まることが無くなってきた。
 そのためか金持ちでも大きくて立派な家を造らない。それどころかハウスメーカーのペラペラで資産価値すら無いような家を造る。そんなことで良いのだろうか。
 
 街の中に家を建てるということは既存の街並みの一部を切り取って新しくするのだから、前より街並みが良くならなければいけない。まして間口の広い大きな敷地はその景観を決定づけるので、それなりのものを造るべきである。そうでなければ建て直す資格がない。
 世の金持ちに言いたい。
「歴史に残るような立派な家を建てろ」と。その設計は私に任せろ。

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