NA.home通信 140号
12.feb.2000
もう15年位前になるか、友人と二人、赤倉温泉へスキーに行った時、古びた旅館で二人の老人と出会った。
宿は空いていて、客は4人。隣り合ったお膳でそのお年寄りたちの話しを聞いていたら、私たちが迂回した壁を滑って降りてきたという。
「すごいですね」と話しかけると
「永年の夢でしたからあの壁が降りられて嬉しい」と笑った。
「技術は上がってきますけど、最近体力がめっきり落ちてきました。70歳越えてこの2,3年ダメですね」
そう語るこの人は医者らしく、9時頃白衣を脱ぐとその足で連れのところへ行き、徹夜で東京から車を飛ばしてきたという。
「僕は家族に化け物呼ばわりされていますよ」と豪快に笑う。
「僕も相当ですけどこの人の方がもっと化け物ですよ」
ともうひとりのおじいさんを指して
「この方は86歳ですもの」
先日、同業の仲間3人と1泊でスキーに行ってきた。
みんな子供が中学、高校生になり、親父だけで楽しんでも良いんではないかと企画した。それぞれの家庭で不評を呼んだようだが。
リフトに乗っていても滑っていてもケータイに仕事の電話が入る。
「ちょっと遠くにいますので」なんてごまかしながら、白銀のゲレンデに挑む。
この日の客の中で私たちが最年長であろう。それでもリフトが止まるまで滑った。
夜、夕食を終え風呂にはいると、みんな疲れが出てきて、せっかく買った美味しい地酒も少し飲んだだけでダウン。
あえなく9時頃消灯となった。
赤倉で会った老人は「人生の楽しみは70越えてから」と言っていた。
まだ足元にも及ばないが、大人の楽しみの一つを見つけたようだ。
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