NA.home通信 130号

                 9.jul.1999


 家から小学校のちょうど中間の家にビーグル犬がいる。
 通学路に面してアルミフェンス越しに犬小屋があるため、子供たちのアイドルだった。たしか「ジミー」という名前だ。
 このアイドルもさすがに年を取った。低学年だったうちの娘が高校生なのだから、犬の寿命からいっても当然である。
 私が朝通ると小屋の前で足を崩し、細い目で「ボー」とひなたぼっこをしている。
 セントバーナードか秋田犬のような大型犬なら老犬もそれなりだが、ビーグル犬には似合わない。
 ビーグル犬=元気、ヤンチャ、いたずら好きなどというイメージは彼にはきっと迷惑なものだろう。 

 人は聞いた言葉、目で見た印象でその本質とは関係なく勝手にイメージを膨らませる。
 それはそれでいいのだが、「思いこみ」から誤解につながることがあるので気を付けたい。

 貿易商のSさんは、こちらの言うことをちょっとも理解しない貿易相手の女性に腹を立て、電話を切ると

 「この女はブスでデブでソバカスのある典型的なアメリカ女に違いない。絶対そうだ」と言い捨てた。

 しばらくして彼女は日本に来た。

 「Sさん、ちょっとあなたの言うイメージと違うね」
 「よかった。本人に言わなくて」

 にっこり笑って握手を求めてきた彼女は、長身でスレンダーな美しいブロンドの女性だった。

 それからSさんの彼女に対する態度が一変したのはいうまでもない。


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