NA.home通信 129号

                 20.jun.1999


 学生の頃、ヨーロッパ建築視察団というたいそうな名前のツアーに参加し、異国の夏を過ごしていた。
 10日目くらいにフランスのリオンから寝台列車でバルセロナへ入った。
 一度ホテルに入り、バスが出るまでの1時間で、各々昼食を取ってから集合ということになった。
 それまで、ドイツからスイス、フランスと田舎道をバスで移動してきたので、美味い昼飯に出会っていない。ホテルのすぐ近くにビジネスマンがぞろぞろ入っていく店があったので迷わず入り、本日の定食みたいなものを注文した。

 二人で冷えたビールを飲みながら待っていると、スープ、サラダのあと肉料理と一緒に持ってきたのはどう見てもイカの天ぷらなのだ。

 「イカ天だよな、コレ…」
 日本を離れて10日あまり、涙が出るほど美味い。
 「やっぱ、天ぷらは南蛮渡来の料理だったんだ。」
 と感心しながら食べ終わると、デザートが来てまたびっくり。

 「コレ、スイカだよな」
 「ほかに何に見える? 縞もあるし」
 「すっげーうれしいな。でも、天ぷらとスイカは食い合わせじゃないか…」 
 こんなトコで変なことを思い出すヤツだ。

 「それは日本での話で、ここはスペインだぞ」
 「それもそうだな」 と訳のわからん説明に友人はうなずき、美味そうにスイカを食べだした。

 バルセロナは合わない食生活で減りつつあった体重の折り返し地点で、これから、エビ、カニ、タコ、魚、ワインにフラメンコと熱いスペインの旅は続いた。 


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