NA.home通信 446号
18.Mar.2018

 少年の僕は高い鉄橋の真ん中に立っている。両サイドは山、青い入り江に青い空、実に美しい。そんな夢を何度も見た。
 修行に入った事務所の先輩は島根出身。当時は京都から山陰本線で帰郷する。そのとき通る余部(あまるべ)鉄橋の話をしてくれた。老朽化した橋をゆっくり抜けるのだ。その光景が子どもの頃見た夢と重なった。
 僕は橋の上から立ち小便をする。先端は霧のようになり消えてしまう。実に爽快!。目が覚めると布団の上に日本海が広がっていた。

 鳥取での耐震リフォーム達人塾の翌日、講師陣でレンタカーで訪れた。
 道の駅「あまるべ」ができていた。悲しい転落事故をきっかけにコンクリート橋に掛け代わっている。数年前、普通列車で上は通ったことはあるが、下から見上げるのは初めてだ。古い架橋も一部残され、それを利用してエレベーターが設置されていた。
 エレベーターは無料、ガラス張りで、足元がすくむ。鉄橋とコンクリート橋が隣り合っていて、鉄橋側が歩道である。エレベーターの右側は鉄橋が切り落とされていて、左は山側で駅になっている。まさしく天空の駅だ。
 高さ40m、ビルだったら12階の屋上くらいか。昨日の雨は上がり、青い空と青い海、白い波が立っている。景色は抜群。
 鉄橋は線路が埋まるように舗装してある。床にガラスがはまっていて下も覗ける。当時のままの鉄橋が残っているのが良い。
 風が強く寒い。あと数分で列車が通るようだが、我慢できず、下に降りた。
 大人になって鉄橋の夢を見る。小便し終わったのにスッキリしない。何故だ?。
 「ヤバい」飛び起きて確認する。そこには日本海はなかった。
 危ねー。

HOME   LIST   445号  447号