NA.home通信 429号
19.Mar.2017

 小学生の頃、一番好きな食べ物は屋台のラーメンだった。
 近くの末広町交差点に夜2台の屋台が出ていた。北の薬局前には田中さん、南の靴屋前にはキンちゃん。同傾向の味だがこどもの私はこってり目のキンちゃんの味が好きだった。たぶん豚骨ベースの醤油味、叉焼が2枚とシナチク、蒲鉾が載っていた。
 
 家の引っ越しなどで遠ざかってしまい、忘れていたが、大人になって、結婚して、開業して半田に戻り、何かのタイミングで夜末広町の交差点を通ると、薬局前にラーメン屋台が出ているではないか。軽トラになっていたが田中さんが親子でやっていた。懐かしい。
 名古屋で飲んだ帰り、住吉町が最寄りの駅だったが、知多半田まで乗り、迎えに来た妻と二人で食べた。
 小ぶりのどんぶりに座布団を底に当て、手で持って食べる。味は変わらない。ちょっと硬めの麺が美味しい。
 食べていると、かなりの確率で兄の同級生、餃子屋のGさんと会った。店を閉めてから来るのだろう。彼は車の中で親子二人で食べ、持参の保温容器で1人前持ち帰った。毎回同じ光景を見た。
 そんな日々を続ける内、体型がヤバくなり、飲んだあとのラーメンは止めた。
 
 屋台のラーメンを食べなくなってどれくらいだろう、おそらく四半世紀は経っている。今、半田市内で屋台のラーメンはどこかで出ているのだろうか。
 昔は街中に映画館が数軒あって、ナイトショーが終わると映画館から出てきた人並みが、屋台の前で足を止めていた。そんな光景は今は無い。街の賑わいの象徴だったような気もする。
 血糖値が高くなり、カップ麺もほとんど食べなくなった。
 その反動か、妙にあの味が懐かしい。あーラーメン食べたい。

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