NA.home通信 390号
23.nov.2014

 昔よく訊かれた「CADを覚えるにはどうしたら良いですか」。
 そういう問いには「簡単だよ、製図板を捨てりゃあいい」。と答えた。そんなこと訊くヤツに覚える意思など無い。
 
 私は多額の借金して覚えたので製図板は捨てていない。高価な機械は全て時代と共に無くなったが、手描き時代の異物はまだ残っている。トレーシングペーパーやタイトルのハンコ、雲形定規やドラフティングテープなど懐かしい顔ぶれである。
 その中に字消し板がある。製図の経験がない人には縁のないものだろうが、鉛筆書きには必需品である。ステンレスの薄板に様々な形に穴が空いていて、消したい部分に穴を合わせて消しゴムで消す。消しゴム用のマスキングプレートと言えば解りやすいだろう。
 
 お気づきかもしれないが、通信のイラストの着色を水彩からパステルに変えた。理由は上達しないから。水彩は塗ったら戻らない一発勝負だし、コピー機のスキャナーでは地肌が飛ぶので、水彩のぼかしが出ない。
 で思いついたのがパステル。色鉛筆に行かないところがプロっぽい。色鉛筆の芯を固めたようなしろモンで、クレヨンのように塗っても削って粉にして塗っても良い。ざっと塗って、擦ってぼかす。指やティッシュで良いが、私は綿棒でやっている。
 そこに字消し板登場、マスキングしながらぼかし、要らないところを消す。未熟で、塗り絵に留まっているが、字消し板を使っていると、手描き図面の時代が蘇る。筆で塗るよりなじむのは、これができるからかもしれない。
 
 四半世紀ぶり復活の字消し板、薄っぺらなステンレスの板に人生を感じる。薄っぺらな私もどこかで復活するかも。

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