NA.home通信 126号

                 25.apr.1999

 独身だった頃、安月給とローンに挟まれた中から小遣いを貯めてレコードを選びに行くのが楽しみだった。

 その日も至玉の1枚を買おうとあれこれ見ていると、雨降りの中、合羽を着た小さな子を連れた女性が子供の選んだシングル盤を買っていった。

 「歌の好きな子だな。でも、何もこんな雨降りに買いに来なくても…」と思っていると、また似たような親子が入ってきて「あ、これこれ」と言いながら1枚取ると買って出ていった。
 その買い方が選んで買うというのではなく、決まり切ったものを買いに来たという感じなのだ。
 「幼稚園で指定の曲なのかな」と考えていると、また合羽を着た子が入ってきた。ちょっと今度は大きい。2年生くらいか。でも同じレコードを買った様だ。

 さすがに気になったので、そのあたりに行ってみた。
 「どれだろう?コレかな?」
 童謡の中で一番たくさん積まれたシングル盤を見つけた。
 「ん?およげたいやきくん??何じゃコレ?」

 話は先月、その「たいやきくん」を抜く勢いのヒットだという、おなじみ「だんご3兄弟」。
 3月3日発売されたというので、早速、オリコンのホームページを見た。
 3月3日のデーリーチャートは、破格のヒットを続けている宇多田ヒカルを押さえて堂々の1位。
 その後気になったので時々覗くと1位は動かない。最近になってようやく2,3位になった。

 この頃は若者向きの音楽ばかりで、広い世代に支持される曲が無かった。
 「だんご」はいささか低年齢寄りだが、普段CDショップに行かない人たちに足を運ばせた。
 ニーズが有ってもそれを満たすものが無ければ人は買わない。逆に人が欲しいものを作れば、いつもは見向きもしなかった人たちにシェアが広がる。
 ここに不景気脱出のカギがありそうだ。
 それ以来、一攫千金を夢見る私だが、頭がちょっと昼寝しすぎて堅くなってしまったようだ。


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