山と木にこだわる

山長商店 見学記

NARUTA建築事務所

今まで、あまりにも林業こと知らなかった。言われてみれば当たり前なのだが、杉や桧は天然自然に生えているものではない。人が植えて育てているのである。それもぼんやり植えているのではなく、目的を持って作っているのだ。

紀州の杉や桧は昔から建築用木材として生産されている。建築用であるから、太さや長さもそうだけど、まっすぐ直線的に伸びていること、強度があることが大事である。
では他の地域はどうか、たとえば奈良県、吉野の木は樽や桶の材料として古くから作られていたので、密度が高く年輪が詰まっているのだそうだ。逆に九州では船用の木材として作られていたので、広い大きな板を取るために、年輪は詰まってなくても太く大きな木を育ててきたそうなのである。

それは、植え付けから違ってくる。吉野杉は約1m間隔にびっしり植える。若木の頃の成長を抑え、芯まで年輪の詰まった木を作るのだそうだ。九州は2m間隔に植え、のびのび育てる。紀州ではその中間、1.5m間隔くらいに植えるのだそうだ。

年輪を真ん中に真円状に育てる、それも重要。年輪の開いている方が南、という話しを聞くがそれは間違いなのだ。斜面に植えるとまっすぐ上に伸びようとするので、曲がった根本ができがちである。そうすると、曲がる外側に肉がつき、内側は年輪が詰まるのだそうだ。つまり切り株の年輪の開いた側は、南ではなく往々にして谷を指すことが多いとか。
間違って覚えていたね。
それと、有名な宮大工の棟梁が言ってた、生えていた場所、つまり南東の斜面に生えていた木は建物の南東側に使う、という話し。それも根拠が無いとか。木の生えていた場所によって育ち方が違うので年輪を見ただけでは南北はわかるはずがないという説明を聞き、「えーっ、一杯いろんな人に話しちゃったよ」俺じゃないよ、あの有名な棟梁の話しなんだから。