NA.home通信 173号

16.jan.2002
 一月ほど前、20年前の自分の作品に出会った。
 刈谷のコーナーポケットというこのお店は、後輩のHが担当で、開店の時に一度いったくらいで、地理に暗い場所でどこにあるかもわからなかった。イタリアンレストランを計画中にお客の持ってきた雑誌で健在であるとを知ったくらいなのだ。

 この日は、豊田スタジアムにサッカー観戦。相乗りの車で知らない道を通った折り、助手席の窓から見つけた。
 描いた覚えのある看板が大木になった植栽に埋まり、何度も塗り替えたと思われる下見板の外壁が、いい感じに古くなっている。

 Hが持ってきたこの仕事は、ジャズメンであるオーナーから「アメリカ西海岸の雰囲気で造ってくれ」という注文だった。
 当時、行ったこともなく、資料もない中で、テレビや映画で見た記憶だけでイメージし、木ばかりでデザインした。床も壁も窓も小屋組のみえる天井も全部。

 今見ると、オープンテラスは芝貼り、エントランスはウッドデッキに木製のステップ。
 なんのことはない、今流行りのデザインなのだ。違うところは20年という年数。綺麗に使ってくれたオーナーに感謝。

 正直、ショックだった。
 20代の駆け出しがデザインしたその店は稚拙だけど若々しく光ってみえた。
 今の自分はどうか、そのときの光は消えていないか、はたして20年分成長しているだろうか、自問自答を繰り返す。

 新年早々、仕事を一つキャンセルされてメチャメチャ落ち込む今日この頃、またあの店を見たくなった。
 でも怖くて行けない。誰か連れてって。

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