NA.home通信 163号

17.jun.2001
 風呂の湯は熱い方が好きだ。子どもの頃、銭湯で近所の頑固ジジィと競って、ついに勝ったことがある。でもあまり長く入らない方がよい。身体は熱いのに全身に鳥肌が立ち、寒気がして、次の瞬間ぶっ倒れる。経験者が言うから間違いない。

 赤ん坊も自然と熱い湯に入れるようになる。気持ちよさそうにしているので油断していたら、温度計は46度を指していた。
 そんなことでウチの娘も息子も熱い湯は平気だ。というより湯を水で埋めない。母親に「熱いときは埋めてね」といわれても「めんどくさい」と言って熱いまま入るのだ。私がそのあとに入ろうとすると熱くて入れないので埋める。

 当然、家の風呂では一番湯が良いのだが、あとから入る家族のことを考えると湯をあまり減らすわけにはいかないので気を使う。
 湯を入れすぎてしまったときは天ぷらのようになって入り、それでもこぼれそうなときは油膜のように表面に身体を浮かして入る。
 先日はさらに多く、既に表面張力で盛り上がっている。どうしようと考えた末、「アメンボウのように入ろう」と思いついたのだが、それでは身体が暖まらないことに気づき、諦めた。

 まだ独身の頃、母が「早く風呂に入れ」と言う。やることがあったので、「これだけ済ましてから」と言っても、「アンタが先に入らないとワシが入れないから早く入れ」としつこい。「先に入ればいいでしょ」と口喧嘩になる。するとトドメの一言。

「一番湯は湯が硬いからいやだ」

 親孝行な私はこの言葉を聞いて即、湯かき棒の役目を果たすべく風呂に飛びん込だのは言うまでもない。

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