NARUTA建築事務所の建築相談
〜 構造編 〜 
  Q1. 建築基準法の設定震度
  Q2. 鉄骨造や鉄筋コンクリート造は木造より強いか
  Q3. 大型のトラックやバスが近くを通ると揺れる
  Q4. 液状化の危険性とその対策
  Q5. 地盤調査と地盤改良
Q1. 建築基準法の設定震度

建物は建築基準法にしたがって建てられていると思いますが、それはどれくらいの震度を想定しているのでしょうか。

A1. 建築基準法は「震度5強」程度

建築基準法(施行令)では、地震標準層せん断力係数(C0)で示されていますが、これは一般に「0.2」です。建物の重量に0.2を乗じた荷重を水平に掛けて地震時の応力を計算します。図のように二割傾けたと同じです。ただ、2階、3階と高くなるごとに割り増されます。これは地震の揺れが建物への影響を考慮しての割り増しですから、基本の0.2は変わりません。昭和56年の改正は、この割り増しなどが見直されました。
では、この0.2という数値が震度に換算するとどれだけか、という質問です。実際は加速度が付きますからイコールではありませんが、震度5強程度と考えて良いでしょう。つまり震度5強では被害が出ないように設計しなさい、ということです。
この程度の揺れは建物の寿命を考えると必ず1回は来そうですね。その程度の地震で被害が出ていたんでは困りますからこういう基準になっていると思います。

では、それ以上の揺れ、震度6弱以上ではどうなるか、心配です。
建物を設計するとき、ギリギリでは設計しませんし、材料の応力もそれぞれ余裕を見て設定されていますので、震度6弱になるとすぐ壊れる、ということではありません。揺れの大きさや周期などにもよりますが、震度6弱だと被害が出るが直せば使える。震度6強では倒壊するかもしれないが、避難する時間は確保する。というところを目指しています。震度7は上限がありませんので、「震度7で大丈夫」と言ったらウソになります。

自社ビルを建てる場合「ギリギリで設計してくれ」と言われるオーナーはいません。みなさん「丈夫なビルを造ってくれ」と言われます。
それを受けて設計者は構造計算で出た結果より、部材を1ランク上げるとか、鉄筋を余分に入れるとか、余裕を持った設計にします。
逆に利益を追求する建物、つまりマンションとか貸しビルとかです。こういう場合、少しでも建物を安く造った方が利益は上がりますから、ギリギリの設計を要求されます。これをやり過ぎて問題になったのが「姉歯事件」なのです。
地震にものを言うのはこの「余裕を持った設計」ということですね。建築基準法は最低の基準を決めているわけですから。
ページトップへ戻る
Q2. 鉄骨造や鉄筋コンクリート造は木造より強いか

地震のことを考えると、木造より、鉄骨や鉄筋コンクリートで造った方が強い家になるでしょうか。

A2. 構造の選択ではなく、強い設計をすることです

構造はなんであれ、きちんと強い設計がなされ、正しい施工がされ、正常に維持管理することが何より必要ですです。建築基準は鉄骨と木造が違う、ということなく平等に基準が作られています。
建物の重さに比例して地震力は増大しますから、軽い建物の方が地震に強い、と言えます。モンゴルのパオなどに住んでいるなら、地震のことなど全く心配は要りません。エジプトのように日干し煉瓦の家なら、地震が来たらひとたまりもないでしょう。
同じように木造は軽いので、少しの耐力で十分だし、鉄筋コンクリートは重いので、相応の耐力が必要ということになります。当然のことながら耐力を上げるとコストに跳ね返ってきますので、重い建物は割高になります。
ページトップへ戻る
Q3. 大型のトラックやバスが近くを通ると揺れる

近くの道路を大型のトラックやバスが通ると揺れることがあります。地盤が悪いのでしょうか。

A3. 地盤が悪いと振動は伝わりません

この揺れはほとんどの場合振動です。堅いテーブルを叩くと振動が伝わりますが、スポンジを同じように叩いても振動は伝わりません。建物が乗っている地盤をバスやトラックが振動を与えるので、振動が伝わり、「カタカタ」と揺れます。これは地震には無縁なので気にしないでください。

では、対策はあるのか、これは困りますが、新築なら出来ますが、そうでなければ無理だと思います。
以前依頼されたお宅は、南隣が名鉄本線の高架でした。ひっきりなしに電車が通ります。
地盤がそんなに良い場所ではなかったので、杭を打とうかと思いましたが、名鉄の高架と同じ支持地盤に杭を打つと杭から振動が伝わってきます。これはまずいので出来ません。それで考えたのがベタ基礎を分厚くすることでした。
鉄筋コンクリートの建物に振動が伝わってくることはあまりありません。それは慣性の法則で重いものは動きにくいからです。そこに着目して、基礎の重さを二倍にして、地面の震動を重さで押さえ込むことでした。
それに要する費用はざっと見積もって30万円ほど。杭より圧倒的に安い。基礎が厚くなるので不動沈下も押さえられる。これで行きましょう、となりました。
結果は大成功。振動は全く伝わりません。遮音も考慮したので、建て替える前からすると施主曰く「無音です」と。正直電車の音はわずかに聞こえますが、ぜんぜん問題なく、テレビの音も会話も途切れないということで合格点をいただきました。
ページトップへ戻る
Q4. 液状化の危険性とその対策

地盤の液状化はどのようなところで起こるのでしょうか。そしてその対策があれば教えてください。

A4. 自治体のマップをご覧ください

液状化は水分を多く含んだ砂地盤が地震の揺れで砂と水が動くことによって生じます。粘土質の地盤などでは起きません。川や海沿いの場所で発生しやすくなっています。各自治体でマップを作成していますので、それを見ると危険な場所がわかります。
 愛知県防災学習システム のホームページ
液状化地盤の対策は、くい打ち基礎である程度抵抗できますが、建物の下の土が流れて空洞になったり、杭が折れるなどで傾く場合もありますので絶対ではありません。
ただ、液状化で傾く場合は、建物の倒壊までは行きませんので、上部構造を強くしておいて、傾いてから起こすように考えても良いのかもしれません。
建物の周囲の地中に壁を回して土が動かないようにする工法があります。これをやればまず大丈夫でしょう。但しそれなりに費用がかかります。
 ランドガード 株式会社リアス
私たちが採用しているのは砕石を杭状に地盤に入れる工法です。この砕石の間から水を流して、抵抗しようというものです。
ランドガードほど完璧ではありませんがコストと効果を比較してベターな対策と考えています。
 ハイスピード工法 技術本部
ページトップへ戻る
Q5. 地盤調査と地盤改良

地盤調査の結果、地盤改良をしなさいと言われました。絶対しないといけないものなのでしょうか。

A5. ケースバイケースです。設計者と相談しましょう。

地盤調査は、ボーリングと言われる標準貫入試験と住宅など軽量な建物で行うスェーデンサウンディングが一般的です。
前者は本格的な調査方法で、地盤の固さと地質が同時に調査できます。また深いところまで調査できるので、杭打ちをする場合、この方法で調査します。費用はそれなりにかかります。
後者はキリを地面に差し込んで調査する方法です。昔は手で回していましたが、現在は機械で回しています。前者のように地中からテストピースを掘り出すことはできませんので、地質までは調査できません。また深いところは届きません。その分安価で、何ヶ所も調査できるのが長所です。通常木造住宅はこの方法で調査します。

質問の件ですが、地盤調査会社が地盤改良工事や杭打ち地業もやっているというか地盤改良会社に調査させていることが多く、報告書は少し悪いだけで、自社の扱う工法を使うような内容になっていることが往々にしてあります。
ハウスメーカーなどは責任回避から、地盤改良を追加工事で薦めてきますが、本当に必要かどうかは施主の判断によります。設計者が信頼できれば相談するのが最良でしょう。
報告書の見方ですが、スェーデンサウンディングの場合、換算N値の欄を見てください。
N値とは標準貫入試験で、30cm打ち込むのにかかった回数です。スェーデンサウンディングの場合は打ち込みませんので、キリの抵抗などから換算N値を出しています。
N値から地盤の耐力を推計することができます。
  N値×(0.8〜1.0)トン/u 
つまりN値が10なら地耐力は1uあたり8〜10トンくらいという計算になります。
木造住宅は基礎まで入れても2階建てで1平方メートル当たり1トンもありません。3倍の安全率を見ても、3t/u あれば支持できます。
とは言え、換算N値3くらいでは不安です。その数値で地盤改良をしない選択は、下記の幾つかの条件を満たした場合に、説明して施主に決めてもらいます。
 ・最近盛り土した土地ではないこと。
 ・建て替えなど、既存に家があって、沈下した履歴がないこと。
 ・地下水位が低いこと。
 ・全ての調査ヶ所に大きなばらつきが無く、不同沈下の恐れが少ないこと。
 ・建物が平屋など軽量であること。

それでも不安が残り、予算に余裕があるなら地盤改良は行った方が良いことは間違いありません。
ページトップへ戻る