NA.home通信 499号
23.May.2021

 昨年、愛知県東栄町の「のき山学校」という施設の耐震診断を手伝った。
 廃校になった木造校舎で、社会人施設にリニューアルする事業の一環である。
 その校舎は昭和29年8月建て方をしている。私と同じ生まれ月、それを知って急に親近感が湧く。
 
 耐震診断では屋根の重量の判断が重要である。その年代なら土葺きの瓦が一般的だが、昭和40年代以降の釉薬瓦に見える。
 しかし、渡り廊下には赤い塩焼き瓦が使ってある。渡り廊下の瓦の方が古い。そこで仮説を立てた。
 
 伊勢湾台風でこのあたりも被害があり、屋根瓦を損傷。その後釉薬瓦に葺き替えて、下ろした古い瓦を渡り廊下に使った。
 まるで古畑任三郎のごとき推理である。
 
 学校だったので文献が残っている。伊勢湾台風の被害が東栄町でもかなりあったという資料はすぐ出てきた。あとは葺き替えの事実だ。
 さらに調べてもらうと、「学校史」という本が出てきて、最後のページが昭和50年、なんとそこに葺き替えが記されていた。
 謎は全て解けた(コナンか)。
 
 天井裏に再度上がり、野地板の間からステンレスのスケールを差し入れる。当たった感触はアスファルトルーフィング。明らかに昭和29年のものではない。
 少し力を入れ、ルーフィングを貫通させた。土に当たらず、瓦に当たった。瓦を持ち上げカタカタと音がした。これで葺き土無しを証明することができた。
 同い年の校舎、建物の歴史は場所が違ってもだいたいわかる。年の功というやつか。
 
 診断や改修に掛かるお宅で、「ウチは古いから」と言われ、伺うと昭和30年代だったりして、ガッカリする。
 俺より若いじゃん。「まだ新しい方ですよ」。誰に言ってんだ。自分にか?。
 「まだまだ頑張れる建物ですよ」と改修設計に挑む。地震が来ても使える建物にしてやるよ。建物よりジジィの俺が。
 「じっちゃんの名に掛けて」。使い方が違うか。

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