NA.home通信 494号
7.Feb.2021

 大事件だ!。
 この仕事に就いて半世紀、こんな時代が来るとは想像も出来なかった。手塚治虫もスピルバーグもこんな未来は描かなかった。
 それはナント、書類から捺印が消えたことだ。河野大臣の一言が、ここまで影響しているとは思わなかった。
 修業時代、新調したばかりの印鑑を名古屋市役所に置き忘れ、取りに戻ったときにはもう無く、所長に叱られたこと。たった一個の印鑑のために往復2時間走ったこと。あれらの苦労は何だったのか、無駄なことを強いられていたのでは無いだろうか。
 
 留守がちな施主の場合、予め許可をもらって三文判をこちらで用意させて戴いたりしているが、それもそう簡単でなない。
 近所のダイソーには珍しい苗字だと置いてないし、良くある苗字だと売り切れている。夫婦連名なら2本要るので、あちこちハシゴをして、無い場合は印鑑店で作ってもらう。
 また半田特有の問題、の違い、前者は榊の真ん中が「示」後者は「ネ」。2種類の印鑑は用意している。
 
 先日郵便局で年賀状の交換を待っていたら、二人連れの女性が入ってきた。日本語が片言で、口座を作りたい一人は全くのようだ。
 外国人が口座を作る場合、印鑑はどうしているのだろう。今のことだから必要無いのかも。
 490号でPayPayについて書いたが、同時にジャパンネット銀行に口座を開いた。ネットで全部出来、印鑑も通帳も無く、あるのはカード1枚、窓口も無い。出入金は郵便局のATMで出来る。口座を開いたら500円貰えた。
 
 事務所の引き出しには、大きめの印鑑ケースが二つ。1つはゴム印。もう1つには例の印鑑と、子ども達が卒業の時学校から貰ってきたひらがなと漢字の名前のゴム印。捨てられない。
 開業時に揃えた大きなスタンプ台と吸い取り紙の船。ほとんど役目を終えている面子だ。
 自分もこれらと同じように時代遅れで役目が終わるときが近づいている。
 印鑑が押されていない建築確認済証が返ってきて、複雑な気持ちになった。

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