NA.home通信 291号
1.feb.2009

 その昔、といってもそれほど前ではない、家は庶民には建てられなかった。それは日本もアメリカもヨーロッパも同じである。
 建てられるのはお金がある人だけ。街では借家に住み、農村では掘っ立て小屋に住むのが庶民の暮らしであった。
 それがいつ、庶民が家を持つことができるようになったかで、近代住宅建築の歴史が始まっている。
 
 西洋では、産業革命あたりか。貴族社会が崩壊して、産業革命が起き、市民が力を持ってきた。建築もアールヌーボーからゼツェッション、バウハウス運動と大きく変化していく。
 では日本はどうか、明治維新?いや、太平洋戦争の後だろう。建築基準法も建築士法も戦前には無かった。
 アメリカは?大恐慌の後、ニューディール政策で住宅資金を長期で貸し付ける制度ができた。ここからスタートする。
 アメリカには土地担保という概念はない。あくまでも住宅に価値がなければ、返済が滞った時に回収するすべがない。そのときに売れる家でなければ融資できないことになる。そのため、普遍的なデザイン、安定した建築資材、美しいランドスケープが要求される。
 
 日本で出来たのは住宅金融公庫。住宅担保と言いながら、土地に抵当が付く場合は、一番の抵当権を要求される。家に要求されるのは、公庫基準と呼ばれた仕様のみで、アメリカのような縛りはなく、あくまでも本人に返済を求めるというシステム。美しいランドスケープなんてどこにも無い。
 
 不景気の時こそ住宅政策が必要である。わずか60年あまりの庶民建築の歴史を大きく変化させるチャンスなんだけどね。いっそ私が日本のグロピウス※1になるか。生まれ変わっても無理だね。


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