NA.home通信 289号
16.dec.2008

 紺屋の白袴とは、よく言ったものである。人の家ばかり設計していて、自分の家は全く手が入れられない。
 築後20年。バブル前だったので土地も安く買ったし、家も安く造った。その頃は30代前半で将来は明るく、いずれ建て直す予定の安普請である。最悪ノストラダムスの大予言が当たれば、借金も命も消えて無くなっているだろうとも思っていた。
 幸か不幸か大予言は外れ、命も借金も21世紀に持ち越している。それでも永遠と思えた住宅ローンの先が見えてきた。
 建て直したい気持ちには変わりないが、宝くじ頼みでは現実性がない。それなら家に手を入れねば、と現実路線にチェンジである。
 
 洗面台の水栓が締まり悪くポタポタ漏れる。パッキンを替えれば良いのだが、その価値を見いだせない。そうこうしているうちに洗濯機が故障。買い換えることになった。
 洗濯機が新しくなると余計に洗面台がみすぼらしい。一念発起して自分でリフォームすることにした。
 一体型の洗面台、水栓、パインのフリー板(大きな板)を発注し、揃ったところで休みを1日費やした。
 みすぼらしい洗面台は撤去して、バラバラに解体し分別ゴミに。20年分の埃やカビが出てきたが、解体作業中に妻が掃除してくれた。
 
 なんとか1日で洗面台は取り付いた。まだ木部の塗装やキャビネット造りなどが残っている。これから少しずつ手を入れていって、年内には珪藻土で壁を塗るところまでやりたい。
 いくら仕事は素人でも、建築家としてのセンスは問われる、それが辛いところ。紺屋が袴を染められない気持ちが解る気がする。


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