NA.home通信 271号
26.nov.2007

 以前、縁あって亀崎幼稚園の園長先生の家の仕事をさせてもらったとき、こんな話を聞いた。
 建て替えで取り壊しの旧園舎の本棚の裏から間瀬琳一画伯の障壁画が4枚現れて、大騒ぎになったそうな。
   それ聞いたことがある。
 わが師匠、伊東先生が若い頃、しばらく市役所で設計監理をやっていた時の話。
 亀崎幼稚園の新築工事で、4枚の大きな建具があって、それが殺風景だったので、駆け出しの琳ちゃんにただで絵を描かせたとか。
 「今じゃ本棚で隠れているけどな」と。
 そういう仕掛けを40年以上前に仕込んでおいたのかと恩師の遊び心に感嘆したものである。
 
 先日、雁宿公園にある明治期に建てられた建物の耐震診断調査に行った。
 昭和8年にこの地に移築され、戦後しばらく結婚式場として使っていた。調査すると明らかに北側の2室は戦後増築されている。
 記録には残ってないようだが、式場にするには部屋が足らなかったのだろう。市の持ち物であるから、市で設計したに違いない。古い数寄屋の建物にマッチしながら、新しい感覚で造られた和室はなかなかのものである。
 何度も見直すうち、その頃市役所でこんな設計ができたのは一人しかいないことに気付いた。
 間違いない、伊東先生の作品である。生きていたなら確認できるが、天国まで聞きに行くことはできないので残念だ。
 何か縁を感じる。この建物改修するなら是非私にやらせて。

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