NA.home通信 107号

                 6.mar.1998


 8年間にわたる勤労学生生活の終焉の日が来た。会場は愛知県体育館。「名城大の卒業式は名城(名古屋城)でやる」という変な理屈だが、まあいい、当日は一張羅で出席した。

 「こんな大勢で卒業証書はどうするのだ」と思っていると「建築科の学生は大学の××教室で授与します」という案内があったので、仕方なく地下鉄を乗り継ぎキャンパスへ向かった。

 ××教室は馬鹿でかい講義室で廊下の突き当たりにある。そこに助手の先生が待ちかまえていて、同窓会に入会しないと中に入れない仕組みになっていた。袋小路で入り口は1つしかない。夜使う予定の持ち金の一部を取られた。

 名前が呼ばれて卒業証書を受け取ると、一緒に記念品と紙の筒が渡された。証書を丸めて筒に入れると友人の筒は白いところが残る。比べてみると筒の方が短い。言いに行くと「すまん、数が足りなかったので揃わなかった。ガマンしてくれ」 「5000円だしてこれかい!」怒る友人をなだめキャンパスを出た。

 その頃地下鉄はまだ八事までしか通ってなかったのでアップダウンの激しい道を八事駅まで歩くことになる。しばらく行くと道の右側の丘に名城大のドル箱、薬学部がある。そこにつながる坂道を矢がすり袴の女子大生たちが降りてきた。

 「おい、あの娘たちを見ろよ」
 「さすが着てるものが違うね、建築科のブスとは」
 「違うよ、持ってるものだよ」
 と言われて手元を見ると、桐の箱に入った卒業証書。

 「薬学部は桐の箱で俺たちは寸足らずの紙の筒かい!。同じ大学でこの差は何だ!!」

 荒れ狂う友人を私たちはもうなだめるすべを無くしていた。


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