NA.home通信 106号

                 15.feb.1998


 娘の明日香が高校受験でバタバタしている。そうなると自分のその頃を思い出さずにはいられない。

 私の年から内申点が採用された。実力試験は抜群の私も内申点は低く、それが響いたのか自分の迷いが出たのか見事H高を滑ってしまった。家の状況から私立は受かっても行く気もなかったので、願書を出し直し定時制高校に行くことにした。

 就職といっても当てがないのだが、母が口を利いてくれて伊東建築事務所に弟子入りということになった。その頃、愛工の定時制建築科へ通う先輩がいて手取り足取り教えてくれた。その先輩は次の正月が来るとやめてしまい、私は一人になった。

 でも一年もやると面白くなってきたし、好きなバイクも乗れるし、変な連中だが学校の友だちもたくさん出来た。はじめは1年後に全日制を受け直そうかと思っていたが、働きながら大学へ進学する先輩も居たし、バイクに乗れなくなるので、建築も学校もこのまま続けることに決めた。中学へ通っているときは自分の将来など考えがなかったのだが、この受験失敗がきっかけで自分の道が決まったのである。

 いろんな事があった。セミが灯りに誘われて教室に入ってきて黒板の裏で鳴きだし、追い出すことも出来ず困ったアブラゼミ事件。「ストーブでパンを焼くな」ということになっていたのだが、家でとれたというニンニクを持ってきて、「ニンニクを焼くなという校則はない」と言い出し、「それもそうだ」と数人がストーブで焼いて喰い出すものだから学校中物凄い臭いに包まれた。当然大目玉を食った訳だが、真冬の夜に窓全開で英語の授業を受けることになってしまったニンニク事件。などなど、事件連発の夜間高校の4年間だった。

 人生、何がきっかけで道が開けるのか分からない。私は15才で道が開けたのだからラッキーだった。それより何も知らない私をこれまで育ててくれた師匠に感謝。


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