NA.home通信 199号

10.aug.2003
 小学校1年の夏休みに亀崎から半田の繁華街に引っ越してきた。
 東西を鉄道に挟まれ北は中埜邸、南はすぐ成岩学区という狭い地域で子どもも少なかった。遊び場といえば車の来ない路地か、運送会社が撤退した跡地で油まみれの水たまりのある汚いが広い空き地くらいだった。

 5年生の時だったか、この地域に子供会が出来るというので出かけた。
 子どもの数より大人の方が多く、商店街の全面的なバックアップもあって持ちきれないほどのお土産をもらった。何かあるごとにお土産があるので、みんな物につられて集まってくる。
 そうはいってもそうそう施しに頼るわけにもいかないのだろう、子供会独自の財政を確保するために廃品回収をすることになった。

 日曜日の朝、班に分かれリヤカーを引いて、担当の地域を回った。表通りを歩いてもまだ商店は開いておらず、何にも回収できない。空で帰るわけにはいかないので、裏通りを1軒ずつ回ろうということにした。
 裏通りは場末の飲屋街。もちろんまだ寝静まっている。そこをたたき起こして協力願うのだ。
 出てくるのはネグリジェのお姉さんやヤンキーの兄ちゃん。そこは盛り場の子どもたちなので平気。何とも言えない雑誌やエロ新聞を出してもらい、洋酒や化粧水の空き瓶は断る。キチンとお礼をして隣の店の裏口を叩く。
 そうやって1軒ずつやっていると時間が掛かる。大人の世話人が探しに来た。
 その時まさにシャツから龍が透けて見える兄ちゃんに協力をしてもらっているところ。 洋酒の瓶類を断ろうとすると「何故だ」と聞かれる。
 「ダメと言われているから」で子どもだけなら通る。でも大人がいるからややこしい。
 「いいです、いただいていきます」と自分の指示を翻すから大人は信用できない。

 結局廃品回収は頑張って集めた僕たちが最高であとはほとんど集まらず、失敗に終わった。その後子供会の集まりがあったかどうかも記憶がない。

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