NA.home通信 172号

15.dec.2001
 ついに今年も暮れる。来年は午年、年男になる。5巡目突入。
 あと一回りで還暦という恐ろしいことに。そんな歳になろうとは、ガキの頃は想像だにしなかった。

 午年で思い出すのだが、小学校低学年の頃は馬車が街中を走っていた。
 若い人は驚き笑うが、本当だから仕方がない。それもれっきとした日通の馬車だ。ちゃんと営業ナンバーも付いている。
 学校から家までの通学路は国鉄の半田駅前を通る。荷下ろしした空の馬車は駅の横の営業所に帰る。
 学校帰りに空の馬車を見つけると走っていって「おじさん乗せてー」と言うが早いか、後ろに飛び乗る。
 駅までのわずかな距離を楽しようという寸法だ。
 「こら、降りろ」と言われることのほうが多かった。
 今思えば、営業車である馬車は人を乗せるわけにはいかないので当然なのだが、子どもには空の馬車に乗せてくれないのは単なる「ケチ」にしか思えない。
 その場合は飛び降りた後、並んで「アッカンベー」か「イー」をする。
 なかには、後ろに飛び乗っても気づかないフリをしてくれるおじさんもいて、当たりくじを引いたみたいにうれしいものだった。
 馬の蹄の音とカラカラと回る車輪の音が軽快で、路面の凸凹がもろにお尻に伝わってきた。
 営業所にさしかかるとスピードを落とし、「降りろー」と言ってくれる。
 「ありがとー、また乗せてねー」

 思えばそれから40年という月日が経った。
 世の中はめまぐるしく変化し、絶対来ないと思っていた21世紀が現実となり1年が過ぎようとしている。
 想像も付かないくらい便利になったがその分失ってきたものも多いような気がする。
 40年前には戻れないけど、少しでも忘れてきたもの取り戻したいね。

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