NA.home通信 109号

                 15.apl.1998

 私は今だ携帯電話を持っていない。たしかに持っていれば便利だろう。でも、「果たして毎月の使用料ほど便利だろうか」と考えてしまう。

 家には誰かいるので連絡がとれないこともないし、留守番電話もある。所員もいないので段取りが悪く遊ばせてしまうことはない。現場はこちらからときどきチェックを入れれば済む。

 といいながら、こちらから連絡が取れないと腹が立つ。
 携帯電話とFAXのせいだろう、家も事務所も全く留守で電話に誰も出ない。
 「用があれば携帯かFAXが入るだろう」と思っているに違いないのだが、私はその番号を知らない。せめて留守番電話でもあれば用件は終わるのだが。

 また、奥さんやスタッフが電話に出てもぶっきらぼうな応対が増えてきた。
「すいません、出ております」というだけで、「お急ぎでしょうか」とも「帰り次第電話させます」とも言わない。
「連絡を取りたきゃ携帯に電話したらどうだ」と言わんばかり。
「留守の時はそちらからかけ直すのが礼儀だろう」と言いたいが、グッとこらえ携帯電話の番号を聞いてかけ直すと

 「電波の届かないところにいるか、電源が入っていないためかかりません」
 これなら、留守番電話の方がよほど役に立つ。

 また、自分で考えないですぐ電話してくる職人が増えたという。
 連絡が取れないと仕事をせず、自分の無能さを棚に上げ、「連絡が取れない親方のせいで仕事ができない」という態度だ。
 これでは人間をダメにする道具がまたひとつ増えただけではないのか。「便利さの裏側にあるもの」を考え、賢く使いこなしたいものだ。


HOME   LIST   108号   110号