NA.home通信 500号
20.Jun.2021

 はがき通信には先輩がいる。
 当時愛知建築士会の編集委員で、委員の先輩H氏が会議の終わりにそのコピーをくれた。
 洒落た文章とカッコいいイラスト。建築士でありながらデザイナーのH氏らしい一枚であった。
 「2週間に一度の道楽」と言う。これが道楽か、好きな文章を書きイラストを描き、親しい人に送る。粋な大人の遊びかも。
 
 最初は、客目当てで兄の店にチラシのように置かしてもらった。
 料理の話題を1つ載せるのが条件で、それが苦しくなり、はがき通信に切り替えた。H氏の「イラスト無きは通信にあらず」の言葉に何くそと下手でもイラストを描いた。
 
 ある程度続いて自信が持てたので、H氏に明かし、通信を交換するようになった。
 その後私は編集委員長も務めた後、委員を離れたが、H氏は続けられ、通信のやり取りも続いた。
 
 ある日お目出度い知らせ、500号記念で個展を開くという。良くそういう発想になるな。さすがデザイナーである。
 もちろんお祝いに出掛けた。私の稚拙な絵とは違う、素晴らしい芸術である。
 「これは超えられん」。文章だけは負けないように頑張ったが、素人の粋を超えることは出来なかった。
 
 H氏の通信は587号で終わっている。
 これが最後の通信になるかもと記してあった。数回の通信は病と闘いながらの壮絶なものだった。返信、FAX、手紙等一切不要とも書いてある。
   
 「いつまで続けるの」とは妻の言葉。
 H氏とは覚悟が違う自分が居る。どうせ超えられないなら終わりを決めようと、「500回まで」と告げた。その時はまだ5年くらいあったように思う。
 
 500回を数え、個展など到底無理な駄作ばかりで最終回を迎えた。
 おかげさまで軽い持病はあるものの元気である。こういう形でお茶の間を汚すことは無くなるが、もうしばらくはSNSなどで発信はしたいと思っている。

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