NA.home通信 268号
25.sep.2007

 知多半田駅前のビル4階で改装工事を行った。窓から見える景色は、右に知多半田駅、左にクラシティ、正面にそれらを結ぶ空中廊下、その下はバスターミナルと、タクシー乗り場である。
 「ここは半田なんだよな」
 その昔、親父が雇われ店長をやっていたのはこの界隈。
 電車が止まるたびに人の波がやってきて、たいへん賑やかだった。その頃は自家用車を持ってる家はほとんど無く、移動はバスか電車、元気な人は自転車でどこまででも走って行っていた。
 私といえば、まだ補助輪の取れない自転車で、200mほどの距離を親父の店まで行くのが好きだった。いっぱい人がいて、なんか楽しいのである。
 戦後の繁栄を象徴するような街。簡易な建物にたくさんの商品が歩道まであふれ、買い物客で賑わい、夜になるとガラッと風景が変わり裏通りに人波は移る。
 自転車の補助輪が取れた頃にはその風景は変わっていった。建物は建て替えられ、アーケードが出来た。街は綺麗になっていったけれど、どうなんだろう。
 そのアーケードも今はない。歩道を工事する音がけたたましく窓から入ってくる。山車まつりに合わせて急いでいるんだろう。
 工事現場を縫うように歩いている人はまばらである。見渡す限り古い建物は一つもない。映画館も銭湯もラーメンが美味しかった店も、野球帽を買ってもらった店も、ここから見える景色の中にあったはずだが、その位置はぼんやりとしかわからない。

 この近未来的な景色が半田市民の心の中に入ってくるには何年くらい必要だろうか。見慣れない景色をビルの窓から見ていたら、昔の景色が重なってきたのである。

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