NA.home通信 124号

                 2.mar.1999

 どうしてもこの時期、進学、就職の話題が多くなる。
 自分のことを思い出すと、昨年の通信で書いたように突然進路が決まったのだが、それまでを思い出しても会社員や公務員といった進路は全く選択肢になかった。

 もう10年以上建設職業訓練校の講師をやっている。
 ここには大工の弟子たちが親方の支援を受けて通ってくるのだが、その経歴はさまざまだ。
 もちろん、工業高校で教えたことのあるヤツも居るが、中卒、高校中退がいるかと思えば大学出も毎年入ってくる。
 専門外で、○○大経済学部卒なんてのが多い。大学を出て就職をしたけど、それを数年で止め、大工に弟子入りという訳だ。
 「それが俺の人生にとっての最短コースだと信じている」
と彼は言う。

 じゃ、何のために大学に通うのだろう。
 大学を休学して仕事で日本に来たアメリカの大学生に聞いたら、アメリカでは高校を卒業してすぐ大学へ進学するのは少なく、いったん働いて入学資金を稼ぐのだそうだ。
 「何で」と聞くと、裕福な家庭でも親が大学の費用を出すことはないのだそうだ。
 大学へ通って金に詰まったらどうするのかという質問に彼は「だからこうして日本へ仕事に来てる」。
 なるほど納得。
 2年くらい働いてまた大学に戻るのだそうだ。

 大変な不況で大学を出ても職がないという状況だ。
 それは大学を出て一人前の給料を取ろうと思うから、職がないのだ。
 医者も弁護士も建築士さえも大学を出ただけでは一人前ではない。いままで、大学を出ただけで一人前の給料を出していた企業があったことが不思議だ。
 リクルートスーツなんか買わずに、作業服を着て現場に潜り込んで、それから出世するコースもあるぞ。


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