私の地元は三州瓦の産地である。
昔は対岸の高浜を中心とした地域で作られ、大火の多い江戸で瓦葺きが推奨されたため、海運が盛んなこの地方の船主達はずいぶん儲けたらしい。
近年大手の瓦メーカーがわが市に移転して来たので、衣浦湾沿岸が産地ということになった。
その瓦メーカーの技術者が訪ねてきた。地震に対してか、屋根の軽量化の意識が広がり、瓦が売れなくなったという。
瓦葺きの家が建築基準法上「重い家」にランクされるので、軽い瓦を開発したから「軽い家」でこの瓦が使えるようにならないかという相談だった。
地場産業が斜陽になるのは大問題だ。技術が向上し、薄く丈夫な瓦が出来た。これなら他と比較しても問題は無さそうだ。早速東京で構造研究所を経営している知人を紹介した。
地震の度に流される、屋根にブルーシートが張られた家の映像は印象が悪い。でも最近の瓦は、地震でもズレず、台風でも飛ばない。また瓦の適度な隙間が、家から出た湿気を逃がしてくれる、もちろん火災にも強い優れた屋根葺き材だ。それが使われなくなるとは建築文化の先は暗い。
審査をするのは例の「協会」である。重さなどは問題無く、もう少しで通るところまで行った。しかし最後に「瓦の定義が外れない以上ダメ」と却下された。
ジェンダー平等問題にも通ずる古い考えでの判断は納得できない。これも権力の壁だ。
行政に蔓延る蜘蛛の巣が払えるのはいつになるだろうか。
全国商工新聞 Mar.2022
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