「名建築で昼食を」というテレビ番組がある。コピーライターの美しい女性と、建築模型作家のおっさんが、歴史的な建築を見学しながらランチを摂る。なんということも無い番組だが建築好きにはたまらない。
番組を見て「名建築」とは、建築家をはじめ、作り手が情熱を持って手がけ、愛情込めて使ってきた歴史が創り出したものと感じた。
いくら歴史的建築でも廃墟のようではランチは美味しくない。美しく使い込まれた生きた建築で成り立つ。
最近、旅行や出張先で町並み・建築巡りをやっている。先日も越前大野へ行ってきた。
出張先の福井から越美北線を一時間、ワンマンカーを降りたのは私一人。歴史からポツンと取り残されたような街だ。
商家を市民ギャラリーに改装された建物を見つけた。興味本位に中に入ると二人の女性が対応してくれた。
120年経つ商家を市が譲り受けてリニューアルしたそうだ。大事に使っていたことがわかる。書院の障子、ランマなどが損傷も無く維持されている。
何せ規模がデカい。迫力に圧倒される。
ガイドブックにもほとんど載っていないが、この街で一番の建物と見た。武家屋敷も見学したが規模が違う。名も無き名建築か。
長年建築を造ってきたが、歴史に残りそうなものは無い。たぶん。
これからの目標が決まった。一つで良いから後世に残る建物を造りたい。残り少ない人生だけど。
全国商工新聞 Sep. 2022
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