ロサンゼルスの夏、まるでオーブンの中のようだ。
「エアコン切ってあるから暑いよ」と言われ入った住宅は、旅行帰りを迎えるわが家の環境とはまるで違っていた。「これでエアコン切っているんだ」。
1997年、日本人が世界中の不動産を買いあさっていた時代、買う振りをして高級住宅を見て回った。家の大きさは想像が付くが意外なのはその性能だった。吹抜のある大空間はその性能があって成り立つのだ。
鍾乳洞に入ると、夏は寒いほどに涼しく、冬は逆に暖かい。地下は外気から隔てられた空間なので、気候の変化に影響されず、年間通して同じような環境になっている。
家はどうか、同じように閉ざされた空間なのに、外気の変化が影響している。屋根や外壁に洞窟の壁のような性能があれば、同じになるはずである。
断熱性能の低い家で冷暖房を付けるのは、保冷性能の無いバッグに保冷剤を入れて買い物をするようなものである。効かないばかりか、悪影響が現れる。まずは入れ物から備える、当たり前のことだ。
この4月から、改正建築物省エネ法が施行された。住宅などの小規模建築物には、建築主に性能を説明する義務ができた。
全く不十分な法令だが、省エネを促進する一歩だと思う。
欧米から四半世紀以上立ち後れた省エネ性能を取り戻すときだ。
ハウスメーカーはまだ動きが鈍い。このチャンスに一気呵成に前に出るべきであろう。
中小建築業者ここにあり、といきたいものである。
全国商工新聞 2021.4
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