NA.home通信 262号

27.may.2007
 「OLD」という言葉には「古い」という意味と同時に「良いもの」という意味もある。
 日本で「古い」はあまり良い意味は無いようである。食料品が古ければ食べられないし、服が古ければ着られない。建物が古ければ危ない、となるのが日本の常識のようである。
 
 4月に行った近江八幡で古い商人屋敷を見てきた。
 太い柱、太い梁でしっかり足固めもあり、耐震的に見ても十分に持ちそうであるし、何より心が落ち着く。近江八幡が優勢を誇っていた江戸末期の建物のようである。安政の大地震後に建て替えたのだろう。
 日本の近代、建築の歴史を見ると、外国の文化が入ってきた明治から、文化の花咲く大正期を経て昭和初期でぶっつり切れている、と言うか終わっていると言ってよい。
 
 伊勢湾台風の時5才の私は亀崎の母の実家に住んでいた。
 朝起きて2階から降りると、家の建具が流されて一本もない。どこの家のものかわからないけど、建具を拾ってきて嵌めるとなんとか納まる。当時は家は何処も同じ規格で造られていた証拠である。
 また家を大事にしていたね、梅雨前の今頃は畳を表に干し、大掃除。障子を張り替え、夏の準備をしていた。

 家を大事にしなくなったのはいつ頃からか。
 耐震診断にいろんなお宅に訪ねるが、畳を定期的に保守するものだと思っていない。敷きっぱなしで、古くなると上敷きを貼り、畳を上げると虫が食いボロボロ、なんてのも珍しくない。
 わが家は20年で三度畳表を変えた。去年変えたばかりだからまだ気持ちがよい。
 家は手を入れながら大事にして欲しいものだ。
 大事にしなくなったのは大事にしようと思わない家を造っている側にあると思う。建築を生業にするものとして早く、大正期のレベルに近づき、歴史的に残るような作品を残したいものである。
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