NA.home通信 103号

                 23.nov.1997

 Carpenterは「大工」と訳されているが実際は少し違うようだ。正しくは「総合建築技術者」としたほうが近い。つまり、家の建築を基礎から大工工事、左官、水道の配管、(電気は違うだろうが)塗装やクロス貼りまでやってしまう人を指す。

 日本は昔から分業は進んでいるが、国土の広いアメリカでは小さな住宅建築での分業が進まなかったのだろう。でも交通事情の良くなった近年はもちろん分業でやっている。だから今は Carpenterはほとんどいない。

 日本の大工さんがアメリカへ行って「アイムカーペンター」なんて言おうものなら恥をかくからやめた方がいい。

 日本の分業も来るところまで来ている。日本の大工さんはカーペンターとまでいかないにしろ、かなり幅の広い技術を持っている。でもこれがいつまで続くか疑問だ。

 今、木造建築の多くがプレカットと言って工場で柱や梁の加工をやってしまい、建前からが大工さんの仕事になる。以前のように大工さんが墨付けや刻みをやらない。だから、若い人はいつまでたっても差し金やノミの使い方を教わらないのだ。これでは一人前の大工の育つわけがない。

 また、我々建築家も大工の技術に頼って設計業務をやってきた部分がある。でもその甘えた時代の終焉は近い。

 アメリカが住宅建築の近代化合理化のために在来工法からツーバイフォーに切り替えていったように、日本でも高い技術が無くてもできる工法に切り替えざるを得ない。

 今更、学歴偏重の社会の歪みだとか、高度成長のツケだなんて言っていられない。次の物件からでも新しい工法に挑戦していくことが必要だろう。


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