NA.home通信 166号

15.aug.2001
「風吹けば桶屋が儲かる」という諺がある。
 私が聞いた話では、風が吹くと砂埃が舞い、目に入り失明する人が出る。盲人になった人は「三味線流し」になるので三味線の皮に使う猫が減り、ネズミが増える。増えたネズミが桶をかじるから桶屋が儲かるという。
 他説あったら教えていただきたい。
 この諺は「回り回って得する人が出る」というような意味で使われているが、いかがなものか。
 風が吹いて砂埃が舞ったとして、諺を信じて桶屋が仕入れを増やしてもきっと元は取れまい。即ち、「詭弁での利益誘導には気を付けろ」と解釈した方がよかろう。

 以前、紙を切断するのが稼業のHさんは仕事が無くて困っていた。話を聞く限り先行きは暗く思えた。
 ところがである。
 環境問題がうるさくなり、大手ハンバーガーチェーンが発泡スチロールの箱に入れていたものを紙の包装に替えたことにより、紙を切断する仕事が爆発的に増え、一気に経営不振を脱却することができたそうだ。
 これこそ「風吹けば…」の実例なのかもしれない。しかしこれを予測することは難しい。それが読み切れれば、商売は大成功することができるだろう。逆を考えれば、発泡スチロールの箱を納めていた業者はとたんに注文が無くなった訳だから一大事なのだ。

「儲かる」という言葉を聞くと代々商家の血が騒ぐ。
 でも浮沈の多いわが家の栄枯盛衰をみれば儲け話に慎重にならざるを得まい。商才というのはたくさんのデータと経験の分析に立った上でのひらめきがあるかどうかだろう。
 てなことを考えながら、額の汗を拭きふき締め切り間際の仕事に追われ、神棚のサマージャンボに手を合わせる毎日である。

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