究極の地震に強い家とはどんなものだろう。例えば卵を扁平にしたようなカプセル型の家を厚い砂利の上に乗せる。風で動かないように少し埋める。
カプセルの膜は二重にして断熱は完璧にする。まるでUFOが降りたような。これなら地震が来ても砂利がクッションとなるし、傾いても簡単に起こせる。
あれこれ考えても工法や材料など課題が多すぎて現実的ではない。安全でありふれた材料で簡易に出来て安価なものが理想だ。さらに十分な断熱で快適な居住空間なら完璧である。
そんなあり得ないような家を開発した人がいる。名古屋工業大学の北川博士だ。インスタントハウスと名付けられたその家は、一人で半日あれば出来る。
テント幕で出来たものを地面にボルトで留め、小さな送風機で膨らめ、内側に発泡断熱材を吹き付ける。断熱材の厚みは10cm余りで強度も十分、80m/sの強風にも耐えられる。
その断熱層の性能は絶大で、極寒でも酷暑でも快適に過ごせるのだ。
開発のきっかけは2011年の東日本大震災。避難所を調査していて、小学生に言われた、
「大学の先生なら仮設住宅を来週造ってよ」
という言葉に動かされ、10年掛かりでようやくできあがった。
日本での需要は今流行のグランピングなどが多いが、元は住まいに困っている人向けに開発したものである。
北川氏はトルコで起きた震災の仮設住宅用に早速3棟を寄贈した。現地の人と作業し、誰でも製作可能であることを示した。トルコ政府からは万単位の引き合いを受けていると聞く。
今後の活躍から目が離せない。
全国商工新聞 May. 2023
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