「私は大丈夫」、根拠の無い自信だ。自分一人の問題なら良いが、人に影響するとなれば迷惑甚だしい。
若い頃、自動車修理工場設計の依頼を受けた。町の小さな工場だが、車を持ち上げるので天井が高い。そのため風圧が影響してやや太めの鉄骨になった。
すると鉄骨屋の親父から電話があった。要は鉄骨が太すぎると言うのだ。何の根拠があって言うか、「俺の経験では…」と話を続けるので、
「あんたの建物は関東大震災や伊勢湾台風より強い台風を経験したのか?」とブチ切れた。
建物の設計ミスは人命に関わる。間違っても危険な建物を建ててはいけない。
しかしその設計は時どきコスト重視や、無知による不理解で勝手に変更される。施主と施工者が仲が良いほど、設計者は孤立し、不本意な建物が作られる。
小規模な建物ほどその傾向にある。
トルコ南部で地震が起きた。断層による直下型の地震である。M7.8だから非常に大きい。阪神淡路の20倍以上だ。
送られてくる映像は建物の崩壊の現場。耐震強度が不足していたに違いない。キチンと設計されて建てられたものかどうかは分からないが、
人命を軽んじられた建物であったことは否めない。
明日は我が身、南海トラフばかりではなく、トルコのような地震はいつ日本の何処で起きても不思議は無い。
そのときに建物が人命を犠牲にする被害が出るだろう。それが根拠の無い自信の上に建った建物では無いことを祈りたい。
全国商工新聞 Mar. 2023
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