人と家の波長
成田完二の 勝手にコラム   耐震 014
 波長の合う人って、初対面でもお互いが理解できて事が進みやすい。
 この波長って何だろう。物理的には波の強さが振幅、長さは一般的には時間だ。音も光も振動も。人の波長は違う気がする。
 太鼓を叩くと音がする。その音が太鼓の固有周期で、振動が伝わるだけで共鳴する。楽器や壁や床まで振動するので複雑な響きとなる。

 建物にも固有周期はある。木造建築は新しいものや壁の厚い土蔵などは周期が短く、古い建物は周期が長い。
 楽器の共鳴なら良いが、建物の共振となると具合悪い。地震の波長が短いと固い建物に被害が出て、長いと古い建物が壊れる。
 先の熊本地震は後の揺れが本震と報道されているが、強さは同じくらいで、揺れの周期が後の地震の方が長く、家の固有周期と合ってしまったため、大きな被害となった。

 高層ビルは固有周期が長い。20階建位なら2秒ほどだから、木造住宅が壊れる1秒周期の地震では上階に揺れが伝わる前に揺り戻され、キャンセルする動きとなる。
 それなら地震に強うそうだが、落とし穴がある。
 地震の強い揺れはだいたい1秒以下の周期だが、1.6秒以上の長周期振動という成分も混ざっている。
 波長が長いため減衰しにくく遠くまで伝わり、高層ビル上層部が篩に掛けられた如く揺さぶられ、立って居られず、家具などは部屋中駆け回る。

 人との波長は合った方が良いが、地震と建物の波長は合わない方が良い。でも避けられない現象でもあるのだ。

全国商工新聞 Nov. 2022
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