祭山車に学べ
成田完二の 勝手にコラム   耐震 012
 愛知県半田市には祭山車が31台ある。
 その構造はほぼ同じで、松丸太を輪切りにした車輪が台輪(だいわ)と呼ばれる土台の内側に固定され、台輪をベースにうわやまが組まれている。
 コーナーを曲がるとき、祇園祭は竹を敷いて滑らせて曲がり、高山祭は横向きの車輪が出てくるなどからくり仕込みだが、半田の山車は幅広のスリックタイヤで、梶棒で力任せに切るから、路面に摩耗した木くずが残る。カーブではギシギシと車体が激しく捻れながら揺れるが、ちゃんと元に戻る。
 究極の柔的耐震構造だ。これも分厚いケヤキの台輪が足元を固めているからである。

 近江八幡で見学した商家は、当主が拘ったという地震に強い構造で、極太の足固めが取り付いていた。
 この時代の木構造は、筋違の無いラーメン構造である。足固めで柱脚を剛接合することで、1階の層間変形が半分くらいになる。つまり耐震強度が二倍になる。

 残念ながら、地元の古民家もお寺も私が調査した限り、この足固めが取り付いて無い。
 折角、手本となる山車が身近にありながら、台輪の構造を学習してないとは、なんとも情けなく悔しい。

 車輪を外して泥中保管をするため、毎年山車組み(やまあげ)、解体(やまおろし)を繰り返す。部品で保存するのでメンテナンスに良い。
 コロナ禍で2年間出来なかったが、今年は規模を縮小して再開した地区もあった。伝統を守らんが為の選択に違いない。
 山車が私たちに伝えているもの、残さず吸収して伝えていきたいものである。
全国商工新聞 May.2022
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