震災後の備え
成田完二の 勝手にコラム   耐震 008
 左に四万十川を見ながら40分余り、景色がほとんど変わらない一本道を案内の車に付いて走る。
 JR窪川駅に隣接した高知県四万十町役場に集合して、午前中は現場、午後は室内での研修に参加した。町内の移動にこれほどの時間がかかる、私の住む半島ならとっくに海の上だ。
 
 午後の研修で聞いた内容がすごかった。
 この広い四万十町の木造住宅を全戸調査し、居住の有無、補強工事が必要か否かを調査し、それを全てグーグルマップに落とし込み、パソコンで何時でも見られるようにした。
 その調査には地元の大工、建築士が参加して、日曜日ごとに行ったとか。歩いてみて地元なのに知らないところや、知らない人に会い、また話をする中で知り合いが増えた。
 
 空き家が実数で把握でき、買い上げか借り上げで町営住宅に改修する計画を検討するという。当然、耐震診断の対象のお宅には案内を置いて来た。
 高知県の建築課長はこう話した。
 震災後の復興には地元の大工、建築士の役割は重要、それまで元気で活動してもらわないと困る。そのためにも耐震改修など仕事おこしが必須だと。
 
 高知県はもの凄いペースで木造住宅の耐震改修が進んでいる。そこには県を中心とした行政と地元の大工、建築士がスクラムを組み、住民の厚い協力の上に成り立っている。
 それを実感させてくれた一日だった。
全国商工新聞 2021.10
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